慢性心不全である場合に適用となることがあるのが、在宅酸素療法です。
ただ、「在宅酸素療法とは何か分からない」という方もいるでしょう。そこで、自身や家族が心不全になり在宅酸素療法について詳しく知りたいと考えている方のため、概要や効果などを紹介します。
この記事では、在宅酸素療法の基本や主な装置の種類、生活上の注意点について解説します。ぜひご覧ください。
在宅酸素療法とは、自宅で酸素吸入を行う治療法のことです。肺の機能が損なわれると十分に空気中の酸素を取り込めなくなり、血液中の酸素量が低下してしまいます。
不足する酸素を補うための方法が在宅酸素療法であり、自宅に専用の機械を設置したうえで機械からつながったチューブを鼻に装着し、酸素を吸うものです。
「家庭(Home)」「酸素(Oxygen)」「療法(Therapy)」の頭文字を取り「HOT(ホット)」と呼ぶこともあります。
酸素は生きていくために必要なものです。心不全により空気中から十分な酸素を取り込めなくなると臓器に負担がかかってしまいます。
在宅酸素療法は、装置の力で酸素を送り込むことで、酸素不足による臓器への負担や身体の不調を抑えるはたらきを期待できます。
在宅酸素療法は、慢性心不全のほか、慢性呼吸不全や肺高血圧症といった方が対象です。ただし、これらの病気でも必ずしも在宅酸素療法の対象になるとは限りません。
肺や心臓の機能が低下したことで体内の酸素濃度が一定の基準を下回っており、医師により在宅酸素療法が必要と判断された場合に対象となります。
在宅酸素療法を受けることで、心臓への負担が軽減され、 QOL(生活の質)の向上が期待されます。また、酸素不足が原因で感じている息切れや動悸といったものを抑える効果も期待できるでしょう。
特に日常的に息切れや動悸を感じながら過ごすのはストレスにもつながるので、精神的に落ち着けるようになるはずです。少し歩いただけで息切れ・動悸がするといった状況だとなかなか活動できませんが、症状が軽減すれば歩行距離が伸び、結果として運動量を増やすこともできます。
また、心臓や肺の状態が悪いと睡眠中に酸素不足になってしまうことがありますが、在宅酸素療法では睡眠中も酸素が送られるので、睡眠中の酸素不足対策としても効果的です。他にも、酸素不足の影響による記憶力や注意力の低下に対して、良い影響を与える可能性があります。
これらの理由から、QOL(生活の質)が向上することも期待できます。心不全になると不安を抱えることになりますが、生活しやすくなり、気持ちが前向きになる方もいるようです。
在宅酸素療法では、カニューレと呼ばれるチューブを鼻に装着し、酸素供給装置に接続して酸素を吸入します。カニューレは両耳にかけて固定でき、付けたままの状態でトイレやシャワー、睡眠が可能です。
携帯用の酸素ボンベを使用することで、外出することも可能です。携帯用の酸素ボンベは専用のキャリーカートを使うほか、リュックやショルダーバッグを使用して持ち運ぶことも可能です。
また、鼻に装着するカニューレが目立つのが気になる場合は、メガネと一体化させることで目立たなくすることもできます。
酸素チューブをつなぐ酸素供給装置には、大きく分けて2種類があります。
設置型酸素濃縮装置は、部屋の空気を取り込み、窒素を取り除いたうえで酸素を濃縮して供給する装置です。
電源さえ確保できればどこでも設置可能ではありますが、停電時に対応できるよう別途酸素ボンベを準備しておかなければなりません。外出する場合は携帯用の酸素ボンベを使用します。
液化酸素装置は、設置型の親機に液体酸素を入れ、それを気化させて酸素を供給する装置です。外出時には、親機から子器に液体酸素を充填し、持ち運ぶこともできます。
設置型酸素濃縮装置と異なり、電力は必要ありません。ただ、外出時などに行う子器への液体酸素充填作業が難しいと感じる高齢者もいるようです。定期的に親容器の交換も必要になります。
在宅酸素療法を受ける場合、日々の生活の中で以下の点に注意が必要です。
【主な注意点】
酸素はものを燃やしやすくする働きを持つことから、火の近くで使用するのは危険です。また、自己判断で勝手に吸入量や時間を変更するとうまく呼吸できなくなる恐れがあります。十分に注意しましょう。
いかがだったでしょうか。心不全の治療法として選択されることがある在宅酸素療法について紹介しました。在宅酸素療法の概要や期待できる効果、主な種類などについてご理解いただけたかと思います。
在宅酸素療法が適しているかどうかは医師が判断するため、まずは相談してみましょう。
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南行徳の面野医院 (訪問診療専用番号 047-321-4600)へご相談ください。