認知症の介護はストレスを感じるシーンも多く、自宅で介護を担当している方のなかには精神的な負担を抱え込んでいる方もいます。
自分たちで介護することに限界を感じている方もいるでしょう。
そこで、認知症の介護に悩んでいる方のため、限界を感じてしまう代表的なケースや注意しておきたい介護うつの危険性、自宅介護で介護の負担を減らすための心がけについて解説します。
この記事では、認知症介護において負担を溜め込まないための方法について解説しています。
認知症になると、さまざまな症状が現れるようになります。代表的な症状は以下のとおりです。
【代表的な症状】
認知症の症状は非常に幅広く、人によって現れる症状には違いがあります。歳を取ったことによる単純なもの忘れと勘違いしやすい症状もあるため、慎重に見極めていかなければなりません。
病院で診断を受けることも重要です。
自宅で認知症の介護を行っている方の中には、限界を迎えてしまうことがあります。どのような状況で辛さを感じるのでしょうか。
限界を感じる原因になる7つのケースを解説します。
介護する方にとって特に大きなストレスや悩みにつながりやすいのが、排泄トラブルに関することです。認知症になると、一人で排泄するのが難しくなることがあります。
当たり前のように行っている排泄ですが、尿意や便意を感じるところから排泄を終えて衣類を整えるまでには、数多くのステップがあります。これらがうまくできなくなってしまい、家族の世話が必要になることも珍しくありません。
たとえば、使い慣れたはずのトイレの場所がわからなくなる、廊下で排泄してしまうなどがあります。
特に介護者にとって大きな負担となるのが、弄便(ろうべん)と呼ばれる行為です。素手で便を触ったり、寝具や壁などに便を擦りつけたりする行為のことをいいます。
認知症になると「便を触ってはいけない」という認識が薄れるほか、おむつ内に排便したことに対する不快感や羞恥心などが理由です。
なかには排泄に失敗したために汚れてしまった衣服を、見つからないようにタンスなどに隠してしまうこともあります。注意しても改善するのは難しく、何度も繰り返されるため、掃除を行う家族にとって大きなストレスとなります。
安全性の問題にもつながってくるのが徘徊です。特に、家族が家にいない時間帯や夜間など、気づきにくい時間帯に徘徊してしまう場合、精神的に大きなストレスになります。
認知症による徘徊が原因で行方不明になるケースは、社会問題となっています。
警視庁が発表しているデータによると令和5年は90,144人の行方不明者がおり、このうち認知症またはその疑いによるものは全体の21.1%となる19,039人でした。(※)
認知症による行方不明者が非常に多いことが明らかです。常に様子を確認できるのが理想ですが、それは困難な場合が多いでしょう。徘徊が心配で目が離せなくなると、介護者の自由が大きく制限されることになります。
認知症になると非常に暴力的な性格になってしまう方もいます。暴力を振るわれたり、暴言を吐かれたりすることが日常的になると、限界を感じやすくなるでしょう。
暴力がエスカレートしてしまった場合はケガをしてしまう可能性が高くなるだけではなく、命の危険を感じることもあります。また、恐怖を感じて介護をするのが難しくなることもあるでしょう。
自分が認知症であることを認めたくなかったり、身の回りの世話をしてもらうことに抵抗を感じたりすることで、介護されることを拒否する方もいます。しかし、認知症の影響で自分では身の回りのことができなくなるケースは珍しくありません。
非協力的な人に対し、介護を提供していくのはストレスがたまることです。このような状況が続くと限界を感じてしまうこともあります。
大きなトラブルにつながりやすいのが、日常生活のなかで起こる火の不始末についてです。認知症になると注意力が低下しやすくなるため、料理をして火をつけたまま他のことを始めてしまうこともあります。
IHクッキングヒーターに切り替えることも方法の一つですが、それが難しい場合は火の不始末に対する心配から精神的な負担を感じることがあるでしょう。
認知症の介護は体調が万全の時であっても大変なので、介護者が体調を崩してしまった時は、より大変さを感じさせます。
体調が悪いときは布団に入って休みたいものですが、徘徊する傾向がある場合は目を離すことができません。また、万が一行方不明になってしまうと、どれほど体調が悪くても探さなければならない状況に陥ります。
体調不良で寝ているタイミングで排泄の手伝いを頼まれることもあるでしょう。体調不良時は精神的にも脆くなりやすいため、限界を感じることが多くなります。
認知症患者の介護をするために家族の生活に支障が生じている場合も、限界を感じやすくなります。介護のために自由な時間が制限されたり、精神的な苦痛を溜め込んでしまったりすることもあるでしょう。
介護の限界を感じるタイミングは人それぞれではありますが、介護者の生活に支障が出ている場合は、すでに限界を超えている状態と考えられます。
限界を超えて介護を続けてしまった場合、懸念されるのが「介護うつ」です。介護うつは特別なものではなく、誰でもリスクがあります。
ここでは、介護うつの主な原因と症状、どのような人がなりやすいのかについて解説します。
介護うつの主な原因は、介護疲れと、介護によるストレスです。
認知症は非常に特殊な病気であり、まともにコミュニケーションが取れないこともあります。理不尽に暴力を振るわれたり、暴言を吐かれたりすることもあり、精神的なストレスも抱えやすいといえるでしょう。
特に、認知症の介護をしなければならないために十分な睡眠や休養が取れていない状態が続くと、脳の処理能力がパンクしたような状態になってしまいます。こういった状態だと冷静に物事を考えられなくなり、思考が鈍くなることで動けなくなることもあるでしょう。
これがまさに介護うつの状態です。
介護うつになるとどのような症状が現れるようになるのでしょうか。個人差はありますが、代表的な症状は以下のとおりです。
【介護うつの主な症状】
大好きなことをしていても楽しめなくなったり、喜びを感じにくくなったりする場合は、介護うつの状態になっている可能性があります。当てはまるものが多いほど介護うつである可能性が高いため、注意しなければなりません。
うつは目に見えるものではないため、自身や家族でも気づきにくいことがあります。そのため対処が遅れる傾向があります。
誰でもリスクのある介護うつではありますが、以下に該当する人はそうでない人と比べてさらにリスクが高いといえます。
【注意すべき人】
何事も大ざっぱに考えて適切に手を抜ける人であれば、ストレスを溜め込まずに生活を続けることが可能です。しかし、細部が気になり完璧を求める人や、責任感が強い人は適度な手抜きをすることが難しく、精神的・肉体的な介護疲れを感じやすくなります。
また、気が弱い人は認知症の方から暴言や暴力を振るわれたときに強く出られず、自分の中に不満を溜め込んでしまうこともあるでしょう。これらに該当する人は、介護疲れによる介護うつを防ぐために十分注意が必要です。
考え方を工夫することで心の負担を軽減することが可能です。介護をする方は、以下の4つを心がけましょう。
認知症の介護を担当するからといって、自分の時間をすべてささげる必要はありません。デイサービスに出かけている時間や寝ている時間帯などをうまく活用し、自分の時間も大切にしていきましょう。
好きなテレビ番組を見たり、趣味に没頭したりするだけでもストレス解消につながります。
他の人と比較したくなる気持ちは理解できますが、比較することで得られるものはありません。
例えば「あの人のうちは家族全員で介護しているのにうちは自分だけ」と考えてしまうと、気持ちが落ち込んでしまいます。
家庭によって介護の形や事情は異なるので、比較しないようにしましょう。
完璧を目指すと負担が増え、精神的に大きなストレスを感じることにつながります。
たとえば、必ずしも今やらなくてもいいことであれば後回しにしたり、うまくいかないことがあっても自分を責めたりしないようにしましょう。柔軟な対応ができるようになるとストレスも抑えられるようになります。
わからないことや気になることは自分一人で悩むのではなく、認知症の専門家に相談しましょう。困難な対応も、専門家のアドバイスを受けることで解決できる場合があり、話を聞いてもらうだけで気持ちが軽くなることもあります。
認知症患者を自宅介護しており、限界を感じてしまった場合はどうすれば良いのでしょうか。無理をせず、以下の方法を参考に対処しましょう。
誰も相談できる人がおらず、自分ひとりで何とかしなければと考えると介護うつのリスクが大きくなります。そのため、医師やケアマネジャーなどの専門家に対し、積極的に相談しましょう。
人に相談したところ、自分がすでに限界を迎えていることに気づけたという方もいます。
困ったときに助けてくれる人や相談に乗ってくれる人がいると考えるだけでも、精神的に楽になります。また、医師やケアマネジャーなどの専門家に相談することによって、より効率の良い介護の方法がわかったり、利用できる公的なサービスについての知識がついたりします。
自宅で介護をするからといって、すべて自身で対応しなければならないわけではありません。自宅介護でも利用できる多くのサービスが提供されているため、これらを積極的に活用しましょう。
例えば、デイサービスを挙げることができます。デイサービス施設に通所して利用することになるので、介護者は、利用者を預けている間に自身の用事を済ませたり、休憩を取ったりすることができます。
また、デイサービスではレクリエーションが用意されており、他の利用者とコミュニケーションを取ることが可能です。これにより、脳の活性化が期待でき、認知症の進行を遅らせる可能性があります。
また、訪問看護も介護負担を大きく抑えるのに効果的です。専門的な知識を持った介護スタッフの訪問を受け、必要に応じて支援を提供してもらいます。
この他にも訪問入浴や訪問リハビリステーション、ショートステイなど、さまざまなサービスを利用可能です。すべてを一人で抱え込もうとすると負担が大きくなるため、利用可能なサービスは積極的に活用することを検討しましょう。
自宅での介護が必ずしも最適であるとは限りません。介護疲れなどでイライラしてしまうと、介護を受ける方のストレスにもなります。
特に自宅での介護に限界を感じている場合は、施設への入所を検討することをおすすめします。
グループホームや特別養護老人ホーム、介護老人保健施設など、認知症でも受け入れ可能な施設はさまざまあります。
いかがだったでしょうか。認知症の自宅介護で限界を感じてしまうケースや、対処法を紹介しました。
どのような点に注意すべきかを理解いただけたのではないでしょうか。本格的に限界を迎え、介護うつになってしまってからではなく、早い段階で介護疲れを溜め込まないための方法や、利用可能なサービスを早めに確認しておきましょう。
入院予定の方が現在加入している保険を確認しておきましょう。加入している保険によっては入院することで入院費用が出ることもあります。
入院を検討しているものの費用面で不安がある方も、医療保険で賄うことが可能であれば安心につながるはずです。経済的な負担を抑えることにもなるので、加入している保険の契約内容をよく確認しておきましょう。
市川市・浦安市で訪問診療の受診をお考えの方は、
南行徳の面野医院 (訪問診療専用番号 047-321-4600)へご相談ください。