大切な家族だからこそ、すべて病院任せにするのではなく、できることは自分でしたいと考えている方も多いでしょう。ですが「在宅医療で対応しているものの、正直なところしんどい」と感じている方は少なくありません。
なかには在宅医療はしんどいと聞いて自分の場合はどうすべきか悩んでいる方もいるのではないでしょうか。そこで、在宅医療のメリットとデメリット、行っておくべき準備などについて解説します。
この記事を読むことによってどういったことが大変で、しんどさを軽減するにはどうすれば良いかなどがわかるようになるので、ぜひご覧ください。
そもそも在宅医療とはどういったものなのでしょうか。これは、通院が難しい患者に対し、医師や看護師が自宅を訪ねる形で医療を提供することをいいます。
主に寝たきり状態にある方が利用するサービスですが、病院に行くための交通手段がない場合にも利用されることがあります。
在宅医療には、週に1回、月に二回など、事前に考えた診療計画に沿って定期的に診療を受ける訪問診療と、必要なときに突発的に医療を受ける往診の2種類があります。
通院ではなく、在宅医療を受けることによるメリット・デメリットにはどういったものがあるのでしょうか。それぞれ解説します。
在宅医療ならではのメリットとして、以下のようなことが挙げられます。
【代表的なメリット】
自宅で医療を受けられることになるので、通院の手間がかかりません。特に体力がない高齢者の場合は、病院が離れているとそこに足を運ぶだけでも一苦労です。
病院についたら長い待ち時間が発生することもあります。このように通院にかかる労力を抑えられるのも大きなメリットといえるでしょう。
また、入院するのとは異なり、住み慣れた環境で過ごせます。病院のように時間帯によってスケジュールが決められており、それに従わなければならないといったこともありません。
医療を受けている間は近くで家族が見守れるので、医療を受ける方にとっても安心につながるでしょう。
それから、病院にはさまざまな病気を抱えている方がおり、なかには感染症にかかっている方もいます。
通院する場合はそういった方との接触を避けることは難しいでしょう。在宅医療であれば、こういったリスクを大幅に抑えられます。
デメリットについても確認しておきましょう。以下のようなことが挙げられます。
【代表的なデメリット】
病院であればさまざまな医療機器が充実しており、必要に応じて検査を追加したり、治療を変更したりすることも可能です。
ですが、在宅医療の場合は、医療関係者が自宅まで持ってきたアイテムで対応しなければなりません。大掛かりな検査などを行うことは難しく、高度な医療行為を受けたいと考えた場合は病院に行く必要があります。
急変時にも同様の制約があります。自宅に運べる医療機器では対応できず、適切な治療ができないことがあります。
また、急変時にすぐに病院に連絡しても医師や看護師が到着するまでには時間がかかってしまい、処置が間に合わないケースもあるでしょう。
さらに、家族の負担についても考慮が必要です。入院する場合は専門家である医師や看護師が診てくれますが、在宅医療の場合、同居している家族が対応しなければなりません。
患者のためを思い選択した在宅医療が、結果として家族に大きな負担を与えることもあります。
在宅医療を選択する際、費用が気になる方もいるかもしれません。月に数十万円かかるとイメージする方もいますが、在宅医療で受けられる医療ケアの多くは、医療保険と介護保険の対象です。
まず、医療費については公的医療保険制度の対象であるため、1~3割負担です。医療費が高額になる場合は、1カ月の医療費が上限を超えた場合に超過分が支給される高額療養費制度の対象となります。
また、人によっては自立支援医療制度の対象となり、費用を抑えて在宅医療を受けることが可能です。
介護サービスについては、介護保険対象外となっているものを除き、公的介護保険内でサービスを受けられます。
具体的な費用については、受ける医療内容によって異なるため、自身のケースについて病院に相談すると良いでしょう。基本は「医療費+介護費+薬代(※各1~3割負担)」です。
月2回医師による訪問を受ける場合の目安としては、以下のとおりとなります。
【目安】
受ける医療内容によっては、費用の合計が月額100,000円を超えることもあります。しかし、こういった場合でも高額療養費制度を利用すれば実質負担額を抑えられるため、想定よりも負担が軽かったという方も少なくありません。
多くても月に50,000円程度で済むのが一般的といえます。
在宅医療を始める前には、いくつか準備しておきたいことがあります。
以下の3点を行っておきましょう。
現在、在宅医療に適した環境になっていないのであれば、環境を整えることから始めていかなければなりません。たとえば、足腰に不安がある方を介護するのであれば、家の中のさまざまなところに手すりをつけたほうが良いでしょう。
廊下や階段だけではなく、トイレやお風呂、玄関などにも付けておくのが理想です。
また、介護用の電動ベッドがない場合は用意しておくと介護負担を大きく抑えられるようになります。こちらは購入すると高くついてしまいますが、レンタルという手もあるので、都合の良い方法を検討してみてはいかがでしょうか。
大掛かりなリフォームが必要になりますが、家の中の段差をなるべく少なくできるように工事するのもおすすめです。車椅子を利用する場合は、玄関を広げる工事をしなければならないこともあります。
また、トイレは部屋から階段を使うことなく移動できる場所にあると良いでしょう。場合によっては、トイレの新設や移設の工事が必要になることもあります。車椅子でトイレ内に入る場合は、このあたりの調整も必要です。
言い換えれば、自宅の環境や設備を整える準備ができなければ、在宅でのケアは難しくなります。介護のための環境や設備を整えられるかを含めて、在宅医療を選択するかを検討しましょう。
在宅医療を選択するにあたり、条件を満たしていればさまざまな介護サービスを受けることが可能です。しかし、そのためには必要な手続きを済ませておく必要があります。
あらかじめ介護保険の要介護認定を申請しておきましょう。
例えば、自宅に手すりを設置したり、バリアフリーに改修したりする住宅改修工事には介護保険が利用できます。他にも介護で必要となるリフォームは介護保険が使える可能性があります。
あらかじめ必要な書類を提出し、施工を行うための手続きを事前に済ませておく必要があります。
緊急時の対応を事前に決めておくことも重要です。急に具合が悪くなった時にどこに連絡すべきか調べておくと、いざという時にも冷静に対応できるようになります。
緊急連絡先をベッドのそばに貼るなどし、家族全員が把握できる状態にしておくことが重要です。
在宅医療を入れたところ、しんどいと感じてしまう方もいるようです。このように感じてしまう主な理由は次の4つです。
介護には休みがなく、一日中何度もケアしなければなりません。負担が大きくなり、精神的にも肉体的にもしんどいと感じてしまうことがあります。
特に一部の家族のみに負担がかかっている状況だと介護疲れにつながりやすくなるでしょう。
病院内に入院しているのとは異なり、なかなか医療スタッフとコミュニケーションを取る機会がなく、しんどいと感じることがあります。
コミュニケーションが取れないと困っていることや気になることも相談できません。不安やストレスにもつながりやすいポイントです。
自宅で対応している以上、何かあった際には、そばにいる家族が迅速かつ適切に対応しなければなりません。この時、うまくできるのかといった不安を抱えやすいのも介護でしんどさを感じやすい大きな理由です。
経済面での負担を大きく感じてしまうことがあります。特に症状が悪化していくと医療費も高額になっていくので、経済的な負担が大きくのしかかってしまうこともあります。
利用可能な各種制度も活用しながら負担を抑えていきましょう。
在宅医療でしんどいと感じるのを減らすにはどうすれば良いのでしょうか。以下のようなポイントがあります。
精神的に余裕がなくなるとしんどさを感じやすくなります。介護が忙しいとなかなか自分の時間を確保できなくなりますが、それでも隙間時間などを見つけ、ゆったりできる機会を設けましょう。
デイサービスなどの介護サービスを利用することで、自由な時間を確保しやすくなります。
困った時に相談できる存在がいると、精神的な支えになります。自分1人で悩むのではなく、なにかあったときは医療機関やケアマネジャーに相談しましょう。
便利な介護サービスなどを知る機会にもつながります。
在宅医療であっても介護保険を利用しながらさまざまな介護サービスの利用が可能です。たとえば、訪問サービスや通所サービスのほかにも短期入所サービスなどがあります。
利用可能なサービスは要支援や要介護度によって異なるため、現在の状態で利用可能なサービスについて、担当ケアマネジャーに相談してみてください。
自宅で対応するのが難しい状況になったら施設に入居することも考えておきましょう。いざという時に入居する選択肢を持っておくだけでも精神的な安心につながります。過度な負担による共倒れを避けることが重要です。
いかがだったでしょうか。在宅医療のしんどいと感じる理由や対策について紹介しました。在宅医療のメリットやデメリットなどについてもご理解いただけたかと思います。家族で協力し、介護サービスを適切に活用することで、負担を軽減していきましょう。
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