訪問診療とは、医師や看護師が患者の元を訪れる診療サービスのことです。在宅で介護やケアを受けており自力で通院できない方は、訪問診療サービスが利用できます。
通院が困難な場合に限られますが、自宅にいながら必要な治療や薬の処方が受けられるため、在宅でのケアを行う予定がある方は、訪問診療の基本的な内容を押さえておくことが大切です。
この記事では、訪問診療の内容や料金の内訳について解説します。訪問診療を利用する方の特徴や利用可能な制度も紹介しています。
訪問診療は、医療従事者である医師や看護師が定期的に患者の自宅へ訪問し、診察を行うサービスです。
厚生労働省では、訪問診療を「在宅での療養を行っている患者であって、疾病、傷病のために通院による療養が困難な者に対して定期的に訪問して行われた診療」と定義しています。(※)
※参照元:厚生労働省「在宅医療と連携について」
https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r98520000012qn3-att/2r98520000012qxh.pdf
料金の内訳は基本診療費・追加の診療費に分けられ、利用者ごとの医療負担割合に応じて算定します。内訳を詳しくみていきましょう。
基本診療費とは、利用者の症状に合わせて医師が治療計画を立て、その計画に基づいて行われる医学的管理の料金と、訪問診療の際にかかる料金です。
医学的管理の料金は「在宅時医学総合管理料(在医総管)」訪問診療にかかる料金は「在宅患者訪問診療料」または「訪問診療料」などとして請求されます。
在宅患者訪問診療料は重症度や月の訪問回数、在宅患者訪問診療料は原則週3回の算定を限度として(例外あり)、算定する仕組みです。
ただし、がん患者の方については「在宅がん医療総合診療料」として、管理料や訪問診療料を分けずに包括的な料金が請求されます。
追加の診療費とは、基本診療とは別に行われる検査や処置にかかる費用です。
追加の診療費に含まれる項目の一例は次のとおりです。
訪問診療では、利用者の状況に応じて検査や処置を実施します。血液検査や心電図検査のほか、点滴や注射、酸素吸入器のような医療機器の使用なども追加の診療費に含まれます。
医療負担割合とは、医療行為を受けた利用者が実際に負担する費用の割合です。
一般的な所得の方は原則的に3割負担ですが、70歳以上の高齢者などは1〜2割になります。ただし、一定以上の収入がある方は年齢にかかわらず3割負担になります。
訪問診療では、在宅患者訪問診療料を中心に算定します。利用者の在宅状況によって点数が異なり、「同一日に同一の建物内で訪問診療を2人以上行ったか」が確認されます。
在宅患者訪問診療料の点数は次のとおりです。(※1)
【在宅患者訪問診療料(Ⅰ)】※1日につき
1、在宅患者訪問診療料1 | 2、在宅患者訪問診療料2 |
---|---|
イ、同一建物居住者以外の場合:888点 ロ、同一建物居住者の場合:213点 | イ、同一建物居住者以外の場合:884点 ロ、同一建物居住者の場合:187点 |
在宅患者訪問診療料1は、利用者1名に対して1つの保険医療機関の保険医が指導・管理し、継続的に行われる訪問診療(1日につき1回に限る)のことです。
在宅患者訪問診療料2は、2つ以上の医療機関が在宅患者訪問診療料を算定する場合に適用されます。これらの点数を元に算定し、採血検査やその他の処置などを実施した場合は、追加の診療費として算定結果に追加します。
訪問診療にかかる費用は、利用者の人数や訪問先の場所、負担割合によって異なります。自宅で1人、施設で2〜9人の方を対象に訪問診療を受けるケースをみていきましょう。(※2)
場所 | 1割負担 | 2割負担 | 3割負担 |
---|---|---|---|
自宅(1人) | 5,500円~ | 11,200円~ | 16,400円~ |
施設(2〜9人) | 1,810円~ | 3,620円~ | 5,430円~ |
※月2回の場合
負担割合が多い方や、週3回など回数が増えるほど費用がかかります。医療保険、介護保険の診療報酬は定期的に見直しと改定が行われているため、一律ではありません。
※1参照元:厚生労働省「訪問診療・往診等における距離要件について」https://www.mhlw.go.jp/content/12404000/001184504.pdf
※2参照元:訪問診療クリニック笑顔「訪問診療の医療費例」
https://h-egao.jp/medical-fee.php
訪問診療の利用者には、次のような特徴があります。
上記は一例ですが、いずれも病院に定期的な通院が難しく、自宅や居室での療養を希望する方が訪問診療の対象です。
訪問診療を受ける方やご家族は、次のような制度が利用できます。
高額療養費制度は、1年間の医療費の自己負担額が限度額を超えたときに、申請によって差額が還付される制度です。
年齢と所得区分によって定められた自己負担限度額を算出し、そこから超過した分が支給されます。訪問診療も医療費がかかる診療のため、限度額を超えたときは適用の対象となります。
注意点として、以下のケースは高額療養費制度の対象外です。
高額療養費制度は、受診者別、医療機関別、入院・通院別で21,000円以上の診療が合算の対象です。(※)
9月1日から9月30日までに、70歳未満の方が通院・入院にかかった費用を合算する例をみていきましょう。
【70歳未満の方の例】
受診・入院した 医療機関 | 受診・入院日 | 自己負担額 | 合算可否 |
---|---|---|---|
A病院 | 9月1日〜9月8日 | 70,000円 | 21,000円以上のため可 |
B病院 | 9月15日 | 15,000円 | 同一医療機関・同一診療科での外来診療の合計支払額が 21,000円以上のため可 |
B病院 | 9月16日 | 10,000円 | 同一医療機関・同一診療科での外来診療の合計支払額が 21,000円以上のため可 |
C病院 | 9月30日 | 15,000円 | 21,000未満のため合算不可 |
※保険外の医療費・療養費や差額部分、入院時の食費・生活費などは対象外です。
※参照元:全国健康保険協会「高額療養費について」
https://www.kyoukaikenpo.or.jp/g6/cat620/r306/
介護保険制度は、介護を必要とする65歳以上の方が要支援・要介護認定を受けたときに、介護サービスを利用できる制度です。自宅などで療養している方は、訪問介護や訪問看護、福祉用具の貸与を受ける際に制度を利用できます。
訪問診療は医師や看護師による診療のため、医療保険が適用になります。ただし、介護保険が適用になるケースとして「居宅療養管理指導」が挙げられます。
居宅療養管理指導とは、利用者が居宅で医師・歯科医師・薬剤師・管理栄養士などの訪問を受け、療養上の管理および指導を受けることです。(※)
※参照元:厚生労働省「居宅療養管理指導」
https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/001123921.pdf
医療費控除は、自分自身または生計を同じにする家族のために医療費を支払ったときに適用される所得控除です。
1年間(1月1日〜12月31日)に支払った医療費、医師や看護師から受けた介護保険サービスが控除の対象になります。訪問診療を受ける方は、次の内容が医療費控除に含められます。(※)
上記のサービスを利用し、一定額以上の自己負担が発生したときに控除が適用されます。
※参照元:国税庁「2 介護保険サービスの対価に係る医療費控除について」
https://www.nta.go.jp/law/joho-zeikaishaku/shotoku/shinkoku/010131/01/03.htm
今回は、訪問診療の概要や料金の内訳、利用者の特徴や利用できる制度について紹介しました。
訪問診療では医療行為が提供されるため、医療費が限度額を超えると高額療養費制度や医療費控除の適用が受けられます。ただし、条件を満たしている必要があるため、制度の内容を押さえておくことが大切です。
訪問診療では検査やその他の処置が行われますが、訪問の頻度や処置内容、訪問先や利用者の負担割合により診療費が変動します。診療費の内訳についても事前に把握し、不明点はケアマネジャーや医療機関にご相談ください。
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