認知症は、脳の神経細胞などがダメージを受けて発生する病気です。記憶力や判断力が低下し、症状が進行していくと感情や日常生活の動作にもさまざまな影響が現れます。
厚生労働省の発表では、認知症有病率は2012年時点で462万人でしたが、2025年には約700万人まで増加するとされています。単独世帯の認知症高齢者は85歳以上で顕著とされ、2025年には85歳以上の男性の7%、女性の14%が独居認知症高齢者になると推測されています。
この記事では、認知症の概要や癌のかかわりについて詳しく紹介します。癌を併発した際のリスクも参考にしてください。
※参照元:厚生労働省「認知症」
https://www.mhlw.go.jp/content/12404000/001088515.pdf
認知症は進行性の脳疾患であり、加齢による有病率が高い病気です。
初期は軽度な認知機能の低下がみられ、症状が進行すると記憶力や思考力、判断力が低下していきます。
発生原因や症状によってアルツハイマー型やレビー小体型認知症といったいくつかの種類に分けられ、異なる原因をもちながらも、共通して見られる症状が多くあります。
認知症への誤解として、罹患してからすぐに症状が進むものではありません。認知症にかかりはじめの頃は自立した生活が可能で、家族や知人とのコミュニケーションにも支障はありません。
まずは軽度の段階から、適切な治療やケアを受けて、普段どおりに自立した生活を送ることが大切です。脳への適度な刺激やストレス軽減が症状進行予防の一助になる可能性があります。
癌(がん)は、遺伝子に何らかの原因で傷がつくことにより、分裂が止まらなくなった細胞の呼び名です。癌化した細胞が増えていくと、体の機能が阻害されてリンパや血管に入り込み、全身へと広がる病気です。
初期の段階はほとんどの場合無症状ですが、発熱や便のトラブルなどが続いて症状が進行してくると、ダメージを受けた部位に痛みやその他の変化がみられるようになります。
喫煙のように生活習慣に関連して発生するケースもみられますが、複雑な疾患であるため、メカニズムが正確に解明されているわけではありません。
癌治療は軽度かつ早期の状態から開始することが重要とされています。さらに、罹患した方の年齢や進行の度合い、健康状態も考慮して治療方法を選択する必要があります。
※参照元:文部科学省「『がん』ってどんな病気?」
高齢の方など、認知症と癌を併発したためにさまざまな症状が現れることがあります。併発によって考えられるリスクは次のとおりです。
判断や同意といった主体的な決定が難しくなる問題があります。それぞれのリスクを詳しくみていきましょう。
認知症と癌を併発すると、他の病気や一時的な症状と誤認識する可能性があります。患者さん自身の判断によって、治療を受けるタイミングが遅れるおそれがあるのです。
突然の体調不良やトラブルが発生したときも、認知症の方は適切な判断ができず、迅速な対応が遅れてしまい健康状態が悪化する可能性があります。
認知症と癌は異なる病気のため、治療計画は患者さんごとに最適化されます。万が一、認知症の症状が進行していると、患者さん自身が治療計画を理解し、治療の選択肢を判断することが難しくなります。
日常生活における自己管理能力も、認知症の症状進行によって低下することがあります。服薬や食事管理、癌治療のためのケアが適切に受けられず、結果として早期治療が遅れるリスクにも注意が必要です。
認知症かつ癌にかかっている方には、健康状態に合わせた治療計画が組まれます。しかし、認知症が進行しているとご自身で理解して同意するプロセスが難しくなってしまい、適切なタイミングで治療を開始できなくなってしまいます。
医療従事者や療法士は患者さんの同意がとれない場合、ご家族などとコミュニケーションをとってケアにあたります。一方、ご家族と連絡がとれず同意が得られないケースは、高齢者の増加にともなう課題のひとつです。
認知症と癌を併発している場合、それぞれの病気がどの程度進行しているかによって入院の可否が決まります。軽度であれば通院と在宅を併用しますが、中等度以上は主治医に相談のうえ、入院治療を決定します。
緩和ケア病棟のような施設では、癌の症状が軽度の場合、入院が難しくなることがあります。しかし、認知症の方を専門的に受け入れる施設では癌治療を実施していないなど、2つの病気を併発している患者さんに対応しきれないケースが少なくありません。
しかし、一般的に、認知症を理由に入院を完全に断られることはありません。認知症に対応できる精神科が設置されている医療機関を中心に受け入れを行っていますので、入院を検討する際は専門医へご相談ください。
認知症と癌を併発しており、入院が難しい場合は次のような対処法が考えられます。
認知症と癌を併発したときは、在宅医療や地域の支援サービスといった専門家による支援と、家族・友人からの協力が受けられないかを検討しましょう。
訪問診療とは、病気や障害によって通院が難しい方に対し、医療従事者や療法士が居宅を定期的に訪問して治療やケアにあたる在宅医療の一種です。
患者さんとその家族から相談内容や病歴を聞き取りし、病状や服薬状況について情報を集めて、診療計画と訪問スケジュールを立てます。高度な医療や手術は対応外ですが、定期的な診療や薬の処方を行うことが可能です。
訪問診療では、通院が困難な方が在宅で基本的な診療を受けることができます。認知症の方は病院までの道に迷ったり正しい時間に通院できなかったりする場合がありますが、在宅であればそのようなリスクがありません。
認知症と癌のどちらか、あるいは両方の症状が進行して寝たきりになっていても、健康状態に合わせたケアを受けることで、患者さんやそのご家族の安心感につながるとされています。
訪問診療では以下のようなケアを提供しています。
定期的な検査や健康チェック、予防接種といった内容に加えて、認知症に対応したケアが受けられる場合もあります。また、癌の患者さんには苦痛の緩和や精神的なケアを含めたターミナルケアを提供しています。
今回は、認知症と癌の特徴と2つの病気を併発した場合について、訪問診療のメリットを含めて紹介しました。
認知症に罹患すると、症状の進行に伴って判断力や理解力が低下するため、癌を併発したときの通院や専門家からのアドバイス、ご自身での服薬や日常生活上の管理が難しくなることがあります。
訪問診療は、住み慣れた居宅で診療が受けられる在宅医療の一種です。通院が難しくても医療従事者が患者さんの心身に合わせた医療サービスを提供します。まずはどのようなサポートが必要かを考え、福祉の窓口や医療機関で適切な手続きを進めてください。
市川市・浦安市で訪問診療の受診をお考えの方は、
南行徳の面野医院 (訪問診療専用番号 047-321-4600)へご相談ください。