高齢者の中には、足腰が悪い、または病院までの交通手段が確保できないために通院困難な状態になっている方もいるでしょう。
「具合が悪くてもなかなか病院に行けない」と悩んでいる方もいます。通院困難だからといって必要な受診を控えるわけにはいきません。
そこで、病院に通うのが難しくて悩んでいる高齢の方のため、利用可能なサービスを紹介します。この記事を読むことによって通院困難となる要因や利用可能なサービスがわかるようになるので、ぜひ参考にしてください。
高齢者が通院困難となる主な要因として挙げられるのが、体力の低下と交通手段の不足、それから認知症による外出の難しさです。それぞれ紹介します。
若い頃と比較して、年齢を重ねるほど体力が低下します。特に病院が遠い場合、体力的な面で足を運ぶのが難しくなってしまうこともあるでしょう。
病院によっては非常に待ち時間が長く、帰宅するまでにさらに時間がかかってしまうところもあります。通院に要する時間や病院での待ち時間、診察時間を考慮すると、通院が困難になるケースも少なくありません。
病院までの交通手段が確保できないことも、通院困難につながる主要な要因の一つです。
高齢になると、自身で車やバイク、自転車を運転するのが難しくなる場合があります。通院のためといっても、無理に運転して事故を起こすわけにはいきません。
公共交通機関を利用して通院する方法も考えられます。しかし、タクシーだと高額になりやすいことや、バス停や駅から遠いためにバスや電車を利用するのが難しいこともあります。
車椅子や杖を使用している場合、公共交通機関を利用しても気軽に病院へ行けず、通院が困難になるケースもあるでしょう。
認知症の症状がある場合、一人で外出することが困難になることがあります。病院は遠くないものの、道順がわからなくなるケースもあるでしょう。
また、一人で受診した際、医師や看護師の説明を十分に理解できず、その結果、病院に通う意欲が減退してしまうこともあります。
通院が困難な高齢者を対象とした多様な支援サービスが提供されています。ここでは、利用を検討しやすいサービスを4つ紹介しますので、参考にしてください。
訪問診療は、医師が自宅を訪問して必要な診療を提供するサービスです。そのため、そもそも通院する必要がありません。
たとえば、本人が一人で病院に行くことが難しい場合や、家族や親族が送迎できない場合でも利用できます。
普段住み慣れている環境で診療を受けられるため、本人にとって安心感が得られるでしょう。患者本人が医師からの説明を十分に理解できない場合でも、訪問診療の際に家族が同席することで詳しい説明を受けることが可能です。
一般的なタクシーは、身体に不自由さを感じている人だと利用しにくいことがあります。そこで利用を検討したいのが、介護タクシーや福祉タクシーと呼ばれるものです。
以下のような違いがあります。
介護タクシー | 福祉タクシー | |
---|---|---|
利用の目的 | 利用制限あり | 利用制限なし |
介護保険 | 条件を満たせば使えるものもある | 使えない |
対象者 | 介護認定を受けた要介護1~5の方 | 病気やケガ、介助が必要などの理由で公共交通機関での移動が困難な方 |
家族の同乗 | 原則不可 | 可能 |
利用の目的について、介護タクシーは日常生活や社会生活で必要となる行為に関連した外出です。
たとえば、通院や銀行での引き落とし・振り込みなど本人が行かなければならない用事などが該当します。
一方、福祉タクシーの利用については目的の制限がありません。買い物やレジャー、冠婚葬祭などの目的でも利用可能です。
ただし、介護保険は使用できません。旅行などでの利用も可能なのですが、その場合は貸し切りとなることが多く、貸し切り代がかかることもあります。
介護タクシーのうち、介護保険が利用できるタイプは介護保険タクシーとも呼ばれます。こちらは、条件を満たすことにより介護保険が利用可能です。
なお、介護保険が適用されるのはタクシー料金全般ではなく、介助料にあたる部分となっています。このほか、タクシーを利用する運賃や、車椅子などをレンタルする場合のレンタル料に介護保険は適用されません。
ですが、介助料部分に介護保険が適用されることもあり、実費よりも安く抑えることが可能です。
保険が利用可能な介護タクシー以外の介護タクシーや福祉タクシーでは、介助料も含め全て介護保険が利用できないことに注意しましょう。
また、介護タクシーの場合は、車椅子やストレッチャーのままでも乗車可能な車両を使用しています。福祉タクシーについてはサービスを提供している会社によって提供されている車両が異なるので、事前によく確認しておきましょう。
自治体では通院困難な高齢者のため、外出を支援するサービスを用意しています。
自治体によって提供しているサービスの内容や料金が異なるので、ご自身の自治体が提供している外出支援サービスをチェックしてみてはいかがでしょうか。
家族が行うことも多い通院介助ではありますが、家族の代わりに行う通院介助サービスもあります。
適用の条件は、要介護認定において要介護1~5のいずれかの認定を受けていることです。担当のケアマネジャーから通院に付き添いが必要と判断され、ケアプランに通院介助の必要性が組み込まれていることも条件となっています。
通院介助サービスでは、乗車前介助や乗車介助、降車介助、会計の介助など、さまざまな場面で介護保険が適用されるようになるのが特徴です。
ただし、自治体によって取り決めが異なるので、どういったもので介護保険が利用できるようになるか事前によく確認しておきましょう。
高齢者だけの通院が難しい場合、どうしても家族のサポートが求められます。それが難しい場合は地域社会のサポートが必要です。
家族が病院への送迎を行える場合は、非常に心強いといえるでしょう。ただ、家族も自身の用事があったり、仕事をしていたりするとなかなか思うようなタイミングで病院への送迎ができないこともあります。
病院への送迎を行うといっても、そのたびに仕事を休むのが難しい方もいるでしょう。
また、病院の待ち時間が長かったり、遠方だったりする場合は送迎を担当する家族にとっても一日がかりになってしまうことがあります。
複数の家族や親族が交代で対応できるようであれば大きな負担にはなりません。ですが、一人で担当しなければならない場合はその人にとっての大きな負担になってしまいます。介護サービスなども活用しながら取り組んでいきましょう。
ボランティア団体が提供しているサービスを活用するのも一つの方法です。家族が対応できない場合であっても高齢者の通院をサポートしてくれます。
利用を検討している場合は、各市町村に設けられている社会福祉協議会に相談してみましょう。自治体によって受けられるサービス内容が異なるので、事前に確認が必要です。
自治体や医療機関の中には、高齢者の通院困難を解消するための取り組みを行っているところがあります。ここでは、実際に行われている事例を紹介します。
たとえば、東京都奥多摩町が用意しているのが、在宅で生活する65歳以上を対象としたサービスです。町内の医療機関にある通院の送迎を行うサービスを実施しています。
自宅前まで迎えに来るので、長距離を歩くのが難しい方でも利用しやすいでしょう。
こちらのサービスの場合、利用料金は無料です。ただ、タクシーのように利用できるものではなく、曜日によって通院可能な病院が定められているほか、乗合ワゴンとして利用することになります。利用には利用者登録が必要です。
また、東京都目黒区でも、高齢者病院内介助助成事業の一環として高齢者をサポートしています。条件を満たしている方を対象に、介護保険制度で対象外となってしまう医療機関での待ち時間におけるヘルパー利用費用の一部を助成する取り組みです。
30分1,000円まで、かつ月4,000円までの助成が受けられる制度となっています。(介護保険の給付対象となる部分は除く)
たとえば、診察室の中まで付き添って医師の話を聞いて欲しい、入院や転院などに関する手続きを行って欲しいと考えたとしても、これらのサポートに介護保険を利用することはできません。
介護保険外サービスとなると費用もかかりますが、この費用負担を抑えることを目的とした制度です。
医療機関側でもさまざまな対策を取っています。たとえば、病院の中には送迎サービスを用意しているところもあります。
病院側から迎えに来てくれるので、公共交通機関などの利用が難しい方にとっても便利なサービスです。
他にも、往診による診察や訪問看護による健康状態のチェックなどを行っている病院も増えてきました。
薬については薬局が患者の家まで届けるサービスを提供しているところもあります。
病院での診療が必要な場合、どのようにして病院まで行こうかと考えてしまいますが、訪問診療を利用するのも一つの選択肢です。
訪問診療であれば医師や看護師が自宅などを訪問して診療を行うため、通院困難な方であっても問題ありません。
ただし、すべての人が利用できるものではないので、対象となる方や利用するメリットを確認しておきましょう。
訪問診療の対象となるのは、病気やケガなどによって自宅療養中であり、かつ一人での通院が難しい方です。
通院困難状態にある方が無理に自身の足で病院まで行こうとすると、事故などの思わぬトラブルにつながってしまう可能性もあります。通院が難しい場合は訪問診療を活用すると良いでしょう。
訪問診療は、大きく分けて2つです。
まず、事前に決めた計画に沿う形で定期的に医師が訪問して診療を行う訪問診療があります。
この他に行われているのが、急な体調不良や急変時に対応する往診です。訪問診療を選択するからといって、急変時に対応してもらえないわけではないため、安心にもつながるでしょう。
病院に足を運ぶことなく、病院で行われる診察や治療、投薬、各種相談などに対応しています。
なお、在宅療養支援診療所と呼ばれ24時間365日訪問可能な体制を整えている診療所以外の場合、時間帯によっては対応できない可能性があるので、よく確認しておきましょう。
また、保険医療機関の所在地からの距離が16キロ以内でなければなりません。これを超える場合は往診が必要な絶対的な理由が認められなければならないため、利用しようと思っている保険医療機関との距離も確認しておきましょう。
訪問診療を利用する大きなメリットは、やはり通院の必要がないことです。
家族に送迎をしてもらう場合は、家族と予定を合わせなければなりません。公共交通機関を利用する場合は時刻表を調べ、バス停や駅まで行く必要がありますが、訪問診療の場合は家で待っているだけで良いのが魅力です。
特に著しく体力のない方や杖・車椅子などを使用した移動が必要となる方は、通院と比較して大幅に負担を抑えられるでしょう。外来の待ち時間もありません。
これは、家族の付き添いが必要なくなることを意味しているため、家族の負担も抑えられるのが大きなメリットです。
また、病院内にはさまざまな理由で人が訪れており、中には感染症のために受診している方もいます。病院に行く以上、そういった方との接触を避けるのは難しくなりますが、訪問診療であれば接することはありません。
感染症リスクを避けたいと考えている方にも訪問診療が向いています。
また、住み慣れた環境で療養可能であるため、精神的な安心にもつながります。健康状態に不安を抱えている方もいますが、安心できる環境で診療を受けられるのはメリットといえるでしょう。
今回は、高齢者が通院困難な状態になってしまった場合に利用できるサービスや問題の解消法について紹介しました。どのような方法があるかご理解いただけたかと思います。
自身で通院したり、家族の送迎が難しい場合は利用可能なサービスを探し、活用してみてはいかがでしょうか。また、訪問診療であれば通院の必要がなくなるため、自宅に居ながら診療を受けられるようになります。
市川市・浦安市で訪問診療の受診をお考えの方は、
南行徳の面野医院 (訪問診療専用番号 047-321-4600)へご相談ください。