病院や施設ではなく、住み慣れた自宅などの住まいで診療を受ける「訪問診療」が近年注目を集めています。医師や歯科医師が利用者の元を訪れて診療を行うものですが、よく似たものに「往診」と呼ばれる医療行為もあります。
訪問診療は、通院が難しい方のためのサービスとして利用されています。自宅での転倒やその他のトラブル、寝たきりや症状の重症化を予防するといった役割もあり、利用者やそのご家族のQQL向上にも役立てられています。
この記事では、訪問診療の内容や往診との違い、訪問診療の手続きと流れ・料金の目安を紹介しています。よくあるトラブルについても取り上げていますので、ぜひ参考にしてください。
訪問診療とは、計画的・定期的に医師が利用者の元に訪問し、診療を行うことです。
一般的には1〜2週間に1回の割合で決められた居宅や施設に医療従事者が訪問し、診療と治療、療養や治療計画の相談を行います。急変時には往診というかたちで訪問したり、入院に関する手配を行ったりすることもあります。
病院ほどの設備機器は整っていないため、専門性の高い治療を受ける場合は入院という処置がとられますが、訪問診療では次のような診療が受けられます。(※1,2)
訪問診療では、薬の処方や予防注射、認知症のケアなど幅広い項目の処置が行われます。かかりつけ医を受診できること、自宅にいながら診療が受けられる点が特長です。
※1参照元:
http://jvmm.jp/patients-faq.php#q4
※2参照元:品川区「在宅医療とは?」
https://www.city.shinagawa.tokyo.jp/ct/pdf/hpg000030079_7.pdf
往診とは、定期的・継続的ではなく要請を受けるたびに診療を行うことです。
また、日本医師会の説明では、「患者家族の求めに応じて自宅に出向くこと」としています。(※)
訪問診療では事前に必要な処置を検討し、準備をして利用者の元へ向かいます。一方、往診は要請に応じて訪問するため、訪問診療よりも緊急度が高くなります。利用者の状況に応じて臨機応変に対応します。
※参照元:日本医師会「5.往診と訪問診療について」
https://ped.gifu.med.or.jp/Zaitaku_Pass/genkou/140_ousin.pdf
訪問診療を受ける際の手続きと流れは、次のとおりです。
手続きの方法を詳しく確認していきましょう。
訪問診療を受ける場合は、通院が難しい状況であることを確認かかりつけ医や通院中の医療機関に相談しておくか、診療が受けられるかを確認しましょう。
上記のケースに当てはまるような場合は、訪問診療が検討できます。
かかりつけ医や通院中の病院で訪問診療を行っている場合は、事前に相談のうえ訪問日をセッティングしましょう。
それ以外の医療機関に依頼する場合は、訪問診療を行っているか確認のうえ、病院に連絡するか、病院のソーシャルワーカーや利用者を担当しているケアマネジャーに相談し、予約を行ってください。
病院に連絡し、訪問診療の要請が可能な場合は面談を行い、診療内容・診療方針・費用の確認を行います。往診や緊急時の救急対応を行っているかもあわせて確認しましょう。
相談員や看護師等と事前に面談し、診療方針について相談します。診療内容や費用、緊急時の連絡方法などを確認し、健康保険証や介護保険証、診療情報提供書(主治医の意見書)などを提出します。
説明を受けて合意し、書類の提示を行ったあとは初回の訪問診療の日時を決めます。ケアマネジャーにも連絡をとり、訪問診療の日時を伝えてください。
病院側は看護師などの関係職種と連携し、処置内容を検討します。処置に使われる器具などを準備し、当日に利用者の自宅や施設へ訪問します。
訪問診療の料金は、基本診療費と追加の診療費を医療負担割合に合わせて算出します。それぞれの項目についてみていきましょう。
基本診療費は、医学的管理にかかる料金(在宅時医学総合管理料または施設入居時等医学総合管理料)と、訪問診療自体にかかる料金(在宅患者訪問診療料✕回数)で計算します。
基本診療費は利用者の人数や訪問先、診療内容によって点数が異なります。在宅患者訪問診療料の点数は次のとおりです。(※1)
在宅患者訪問診療料(Ⅰ)※1日につき
1、在宅患者訪問診療料1 | 2、在宅患者訪問診療料2 |
---|---|
イ、同一建物居住者以外の場合 888点 ロ、同一建物居住者の場合 213点 | イ、同一建物居住者以外の場合 884点 ロ、同一建物居住者の場合 187点 |
在宅患者訪問診療料1は、利用者1名につき1つの保険医療機関の保険医が指導・管理を行い、継続的に行われる訪問診療(1日につき1回に限る)です。
在宅患者訪問診療料2は、2つ以上の医療機関が在宅患者訪問診療料を算定する際に適用されます。
これらの点数と追加で発生した診療費を合わせて算定します。追加の診療費とは、採血検査や心電図検査、予防接種などその時々の状況で発生する診療です。
その時の病状や、利用者やご家族からの要請に応じて検査や処置を実施したときには、追加の診療費がかかります。
追加の診療費に含まれる項目は次のとおりです。
医療機器を新たに購入したときにも、追加の診療費として計上されます。
医療負担割合とは、所得に応じて異なる医療費の負担割合のことです。1割負担は、医療費が10,000円の場合1,000円の負担のみとなり、3割負担では3,000円です。
1割負担で1ヶ月に2回の訪問診療を受ける場合、費用の目安は約7,000〜8,000円です。3割負担の方は約20,000円が目安となります。保険の種類や医療処置の内容によって金額が異なります。
体調の変化や定期健診にともなう各種検査、医療器具の購入をした場合は追加の診療費がかかります。
訪問診療で起こりうるトラブルは次の4点です。
利用者が車椅子を使用している場合は、正しく扱わなければ落下や転倒のおそれがあります。車いすにはいろいろな種類があるため、操作方法を医療従事者と共有しておくことが大切です。
訪問診療の費用は利用者側の状況や処置の内容など、細かく定められています。利用者やそのご家族に料金体系を正しく説明しておかなければ、後からトラブルになるおそれがあります。
治療期間と費用については病院側から説明があり、不明点はケアマネジャーなどにも相談することができます。料金表やスケジュール表を準備してもらうこともトラブル予防に役立ちます。
利用者とご家族の間に意見の違いがあり、方向性がまとまらないトラブルもあります。
一例として、「患者自身は在宅で治療を希望しているが、専門性の高い治療を受けるために入院しなければならないので、入院を推奨する家族と意見がまとまらない」といったケースが挙げられます。
本来であれば医療や介護を受ける利用者自身の意思を尊重すべきですが、費用やその他の理由からご家族との相違がみられたときには、ケアマネジャーなどの第三者にも相談すべきでしょう。
訪問診療では、医療従事者による個人情報の取り扱いに注意が必要です。
利用者の情報や診療内容が入った記録メディアの紛失・盗難、パソコンやスマートフォンへの不正アクセスによる個人情報の流出に注意しなければなりません。
今回は、訪問診療の内容や往診との違い、手続きや料金の目安について紹介しました。
訪問診療では、医療従事者が病院で行っている処置とほぼ同じ内容のケアを実施します。各種検査や点滴などの医療行為、ご家族との話し合いや関係各所との連携まで、細やかな配慮を行っています。
事前に同意をとり、説明や準備を尽くしてケアにあたりますが、予期せぬトラブルが発生するおそれもあります。訪問診療を利用する前にリサーチや検討を行い、不明点はケアマネジャーにも相談してサービスを選択しましょう。
市川市・浦安市で訪問診療の受診をお考えの方は、南行徳の面野医院へご相談ください。
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